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国際システムと国際レジーム
 本稿の目的は、近年提起されてきている「国際レジーム論theories of international regimes」を、1920年代の東アジア国際関係を規定したと言われている「ワシントン体制」に適用するという(少々強引な)試みを行うにあたり、「国際システムinternational system」及び「国際レジームinternational regime」それぞれの概念を整理することにある。

 「国際システム」とは、一般的には「最大の社会システム」を示す。しかし「国際システム」は分析概念であるため、それが実際に存在していると考えるか否かは各理論に依存する。古典的リアリズムにおいては、国際システムは近代主権国家体制として把握される。すなわちここにおいては主権国家が唯一の主体である。これに対し、国家の枠を超越して相互作用する主体の存在を強調し「国際システム」概念を批判することによって登場した「世界システム」という概念は、リベラリズム学派の世界観に依拠する。また英国学派the English schoolにおいては、(近代主権国家体制としての)国際システムを前提として、「国際社会international society」が想定される。英国学派を代表するH. Bullは、「国際社会」とは「国家が一定の共通利益と共通価値を承認し、同一の規則体系に服し、共通制度の働きに協力する社会」であるとした。このように国際的な共通ルールや制度を重視するという点では、英国学派はリベラリズム学派の国際レジーム論と共通点を有すると言える。ちなみにBullによれば、「主権国家システム」という言葉が始めて使われたのは、プーフェンドルフの論文集『国家システムについてDe systematibus civitatum』(1675)においてであった。

 「国際レジーム」とは一般的には、国際システムにおいてgovernance(秩序の形成・維持)を担う制度的枠組みであると言えるが、この概念に関しても各学派により見方に相違がある。S. Krasnerによれば、国際レジームとは「行為主体の期待が収斂する原則、規範、ルール、決定手続きの集合」である。これは社会構築主義constructivismの見方を反映している。一方リベラリズム学派は国際レジームを、囚人のディレンマを克服し国際協力を実現させるための制度的枠組みである、と捉える。またネオ・リアリズム学派の覇権安定論においては、支配的強大国によるgovernance(広義の「統治」)のための制度的枠組みである、とされる。
 このように各学派によりその見解に相違があるものの、その相違を強調することはあまり有益ではない。現実の国際政治においては、国際レジーム(それが存在するとすれば)は多かれ少なかれこれら総ての要素を持っていると見るべきであろう。

参考文献
  • 石黒馨「国際システムと国際レジーム」『阪南論集 社会科学編』第25巻1-3号、1989年、pp.79-89

  • 鈴木基史「国際協調と国際レジーム」『総合政策研究』第5巻、1998年、pp.59-86

  • ヘドリー・ブル『国際社会論 アナーキカル・ソサイエティ』岩波書店、2000年
| 【2008/01/20 13:40】 | 國際政治理論 | 被参照(0) | 意見(0) |
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